star_of_bba’s diary

甲状腺、卵巣と立て続けに手術したのち遊び歩いてます。

スーツケース事件(台北到着)

前回の続き↓

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飛行機は前に行った時ほど揺れず、離着陸もかなり上手な操縦で台北松山空港に到着した。空港が混み合っていたとかで30分くらい遅れての到着だったが、まぁ仕方ない。焦らず、出国審査を通過してスーツケースの受け取りへ向かう。

松山空港の荷物受け取り場では、持ち込み不可の食べ物などを持っている人を見つけるために捜査犬が導入されていた。とても賢そうな若々しいビーグル犬だった。かわいい。

預けた荷物が出てくるのを待つ間、私はビーグルに釘付けだった。ビーグルは、係の女性と一緒に荷物を待つ人の間を縦横無尽に行き来する。そして時々、ベルトコンベアの上に颯爽と飛び乗り、流れている荷物の匂いも嗅いで調べる。もう、動きの一つ一つがかわいい。キビキビしてて張り切っててかわいい。

見とれているうちに、ダメな荷物を特定する瞬間まで目撃できた。2回も。ビーグルはダメなものを見つけると、荷物にすごい勢いでかぶりついて匂いを嗅いでから、これだよってお知らせするために荷物の前でおすわりする。かわいい。かわいいだけじゃなくて賢い。最高。はぁ良いもの見た。



私たちはビーグルにおすわりされることなく荷物を受け取ることができた。まずは空港から車で10分くらいの場所にある『I USE』という食器屋さんまでタクシーで向かうことにする。このI USEでは『大同磁器』というところの品を取り扱っている。大同磁器というのは、安くて使いやすい白磁の食器を豊富に作っている台湾の食器メーカーさんだ。小籠包で有名な鼎泰豊でもここの食器が使われている。

松山空港のタクシー乗り場は広めのスペースに5台くらい並んで停車できるようになっている。前の車の出発を待つことなく準備ができた車から発車できる仕組みだ。お客さんは少し並んでいたが、タクシーは次々にやって来るので、すぐに私たちの順番になった。トランクにスーツケースを入れてサッと出発。あらかじめメモ帳を1枚切り取って住所とお店の名前を書いておき、それをタクシーの運転手さんに手渡した。

運転手さんはグラサンかけたおっちゃんで、なんかいかつい感じ。車内も、フロントガラスの下全面にふかふかした布を被せて、真ん中には仏像を飾り、後部座席はすだれみたいなシートが敷かれていた。期待を裏切らない、おっちゃんの印象そのもののいかつさだった。


後部座席シート参考画像。これの背もたれの部分がなくて中の茶色い素材だけで長方形になってる感じ。


出発すると運ちゃんが何度もスタ?スタ?と聞いてくる。何言ってるか分からなくて、分からないというジェスチャーを繰り返すだけだったけど、タクシーを降りてからお店の近くにSPAと書かれているガソリンスタンドを見つけて納得。ここの近くだよねと聞いていたっぽい。うん、初めて行く場所だったから言ってる意味が分かっても答えられなかったな。

やりとりが成立してるのか不安を感じつつも、無事お店の近くまで車は進み、ここ?と指さされてイエスイエスと言いながら、お店を少し通り過ぎたあたりで止めてもらった。車がひっきりなしに行き交い、長く車を停車してると邪魔になりそうな場所だったため、お金をピッタリお釣りなしで払い、お礼を言いながら急いでタクシーを降りた。

行きたいところに連れてきてもらい、ほっとしながらお店に向かって歩き出したが、1分くらいして夫が頭を抱えながら叫んだ。




「あーっっ!!スーツケース!!!」


瞬時に状況を理解した私も叫んだ。


「わーっっ!トランクに載せたまんまだー!!!」


そう、急いで降りることにばかり気を取られてすっかりスーツケースの存在を忘れてしまっていた。私たちも運ちゃんも、誰一人トランクに積まれたスーツケースを思い出さなかった。なんてこった。

どうしようどうしようと考えながら、気付いた運ちゃんが戻ってこないか期待してキョロキョロ周りを見渡す。タクシーはいっぱい走ってるけど、それらしき車はどこにもいない。来る気配も無かった。夫が 「とりあえず電話してくんない?」 と言ってきた。ちょっと意味がわからなかったので最初は聞き流していたんだけど、何度か繰り返されたので、どこに?と聞いてみたら


「…日本領事館とか…?」


聞いてもやっぱりちょっと意味がよく分からなかったので聞かなかったことにした。
(ちなみに台湾には正式な日本領事館は無い。ご留意ください。)



ひとまず運ちゃんが戻って来ることに望みをかけて、降りた場所でしばらく待ってみた。が、数分待つうちに、私も夫もこの待機にはあまり意味がない気がしてきた。行き先を伝えたから店に来てくれるかもしれないし、新しいお客さんつかまえるのにまた空港に来るかもしれないし、どっちにも来ないとしても、空港に行けばタクシー会社の人がいるだろうから、そこで無線とか使って探してもらえるかもしれない、と2人で話し合って考えを巡らせて、とにかく店行って買い物してサッサと空港に戻ろうぜってことになった。

お店では、夫が目当てのレンゲとレンゲ置きをすぐに見つけた。それから一通り店内を見てまわったが、大同磁器以外はわりとお高めの、日本のデパートとかに置いてそうな食器ばかりだったので追加購入は見送り。レジに向かう際、夫から、ここの店員さんにもタクシーにスーツケース忘れたこと説明しておいたら?もしかしたら運ちゃんがここにくるかもしれないし、と提案されたが、レジのやりとりで英語ができそうな店員さんはいないと分かり、断念。

買い物を終えたので、流しのタクシーを捕まえて空港に向かった。このタクシーがロクなもんじゃなかった。車内は臭いわ、運転は荒いわ、前を走る車をクラクションで煽るわ、少し強引に割り込んできた車に悪態つくわ。

ガイドブックやネットによく書かれているけど、やっぱり流しのタクシーは危険だ。特に、こちらの様子を見て近づいて来るような車は、屋根の突起部分に大手の会社名が書かれていなければ避けた方が無難だと思う。車が汚れていたり凹んでいたら尚のこと乗らない方がいい。もしタクシーを探している時、先に言ったような車が勝手に近づいてきた場合は、タクシーの方を見ずに放っておけば走り去って行くので、利用したお店の人に呼んでもらうか、道路を走ってるタクシーの中からきれいな車や大手の会社の車を見つけて、手をあげて自らつかまえよう。



げんなりしながら松山空港に戻り、タクシー乗り場にいた案内係っぽいオバちゃんに、英語できる人いる?って聞いてみた。オバちゃんが警備員のお姉さんを呼んでくれた。

拙い英語で状況を説明しようとしたがうまく通じず、ただただI USEに行きたい人だと勘違いされて、危うくまたタクシーに乗せられるところだった。慌ててNONOと繰り返し、なんて伝えたもんか困っていると、お姉さんが一緒にインフォメーションセンターに行こう、と誘ってくれた。

インフォメーションセンターでは、幸運にも日本語のできる男性がいたので再度状況を説明。何とか通じて「レシートもらいましたか?」「車の番号は?」「なんて会社でしたか?」と尋ねられるも、すべて「分からない」という返事しかできず、詰んだ感満載の私たち。

たくさんの人に迷惑かけまくって申し訳なさの極みなんだけど、大事なものは全て手元に持っていて、スーツケースには着替えとか化粧品とか、最悪、見つからなくても金で解決できる範囲の荷物しか詰めてなかったためそこまで悲壮感がなく、それよりも自分たちのあり得ない頭の悪さ加減と非日常感に面白さを感じてしまい、若干にやけてしまう私たちがいた。本当にごめんなさい。

こんな詰んだ状況でも、日本語のできる男性が他のスタッフに私たちの話を通訳し、他のスタッフがパソコン使ったりどこかに電話したりとテキパキ働いて下さった結果、何か動きがあったらしく、連れてきてくれた警備のお姉さんに2言3言伝えてお姉さんが頷き、お姉さんが私たちに向かってフォローミーと言いながら再度外に出た。状況は全く見えなかったけど、どうにかしてくれようとしてるのは雰囲気で分かったので、素直にお姉さんの後をついて行った。

お姉さんはおびただしい数のタクシーが待機している道や、駐車場の中を突っ切ったりしながらどんどん進んで行く。タクシーの中央センターみたいなとこ行くのかな?タクシー会社がこの辺にあるのかな?そんなことを夫と予想して話しながら、3〜4分歩き、お姉さんがこっちだよと手招きした建物は、警察署だった。



なるほど警察。遺失物届とか出せってことですね?よく考えたらどこのタクシー会社の運ちゃんかも分からないんだから、確かにそれしか方法無いよね。警察かぁ。どうしよう。日本でも遺失物の届出なんてしたことないのに、初めての届出が異国だなんて、私にちゃんとできるだろうか。

不安と、不謹慎ながら少しのわくわくを抱えつつお姉さんの後に続いて建物に入った。お姉さんが入り口正面に座ってるめっちゃ怖そうな人に話しかける。怖そうな人が奥の部屋を示す。示された部屋へお姉さんと一緒に近づく。近づくにつれて部屋の中が見えてきた。見えてきた部屋の中、あの壁際、端っこにちらりと見えるあの色あの形は…………




スーツケース!私たちの、スーツケース!!!


思わず「あったー!!」と大声を出してしまった。部屋に入ると、お姉さんがあれ?って私たちに聞いてくれた。イエスと謝謝を何度も何度も繰り返した。お姉さんはニコニコして頷いてくれた。部屋の中にいた警察官がにほんじん?と聞いてきた。イエス、と答えると机に座るよう促された。じゃあ戻るねって感じでお姉さんは去って行き(仕事中なのにわざわざ警察署まで連れてきてくれた。本当にありがとうございました。)そこからは警察官とのやりとりになった。

係の警察官の方とは日本語と英語のチャンポンで会話した。まずパスポート見せて、と言われて夫婦2人のパスポートを渡す。スーツケースは3つ並んでて、全部?と聞かれて2つだと答えた。引き渡されて、鍵を開けてみせてと促される。開けたことで自分たちのものだという証明が完了。続けて、中身が無事が確認して、と言われた。パッと見は無事だった。夫のも大丈夫な様子。もうこの際、戻ってきてくれただけでありがたかったので多少無事じゃなくてもいいと思ってた。大丈夫だと答えた。

その後、連絡先として台湾で使える電話を持ってるか聞かれた。無いからホテルの番号でいいか聞いて、了承してもらえたので、ホテルの名前、電話番号を差し出されたメモに記入。書き終わったところで警察官から「ショジュウも」と言われ、???となる。ショジュウ、ショジュウってなんだろう…相手の警察官もえーっと他になんて言えばいいのかな…とお互い困惑してるところで、夫が勘よく住所のこと?と気付いてくれた。みんなで笑いながらホテルの住所を書き加えた。



住所まで書き終えたメモ帳を見ながら警察官がパソコンにデータを入力して席を外した。コピー用紙を手に戻ってきて、そこに書かれている名前や生年月日に間違いがないか聞かれ、大丈夫だと答えたらサインするように言われた。忘れ物受取証みたいな紙だった。さらにパスポートのコピーにも言われるがままサインする。これで手続きは完了した。何度も何度も繰り返しお礼を言って、出口にいた怖い人にも謝謝と小さく声をかけて警察署を後にした。事件発覚から1時間ほど。驚きのスピード解決。本当に運が良かった。

今回含めて9回くらい海外に行ってて、その中には一人旅だったこともあるけど、初めて海外旅行トラブルを経験した。一度行ったことある行き先だからという気の緩みが無かったといえば嘘になる。油断禁物だ。どんなに短距離でもタクシーに乗ったら車両番号、会社名、運転手の名前は必ず控えた方がいい。

当初の予定では、再度タクシーを使って騒豆花というお店に行くつもりだったのだが、スーツケースを持ち歩くことにもタクシーを使うことにもビビってしまった私の主張で一旦、地下鉄でホテルに向かい、チェックインして荷物を置こうという話になった。


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★台南とか新竹では流しのタクシー使っても全然大丈夫でした ↓ www.ribbons-and-laces-and-sweet-pretty-faces.site