star_of_bba’s diary

甲状腺、卵巣と立て続けに手術したのち遊び歩いてます。

出雲と境港に行ってきた②出西窯〜羽根屋本店〜稲佐の浜

前回の続き





出西窯

無事出雲に着いた。駅前はとにかくだだっ広い。バスロータリーの屋根が出雲らしい立派な木で出来ていた。まずはトイレ休憩。少し雨がパラついていた。駅前に貼ってあったポスターで見かけたレンタルサイクルが気になったけど、このまま本降りになってもおかしくなさそうな空模様だったので止めておいた。トイレの後はコインロッカーに荷物を預け、タクシーに乗り込む。「出西窯までお願いします」と言うとすんなり通じて車を出してくれた。

東京から来て、出雲は初めてだと聞かれたままに答えると、運転手さんが色々ガイドをしてくれた。このあたりは陶器の制作が盛んなこと、中でも出西窯は人気があり、鍋やビアカップはすぐに売れてしまうこと、出西窯は他と違って作業場を快く見学させてくれて、職人さんたちもフレンドリーで何でも説明してくれること、などなど。他にも、このあたりは神と付く地名が多いこと、タタラ場があり、『ばんこ』と呼ばれる者が交代で足踏みして鉄を作ったことから『かわりばんこ』という言葉が生まれたこと、出雲は昔、2つの家系が神職を勤めていたが喧嘩してしまって片方だけが残ったことなどを教えてくれた。へええと思いながら10分強で出西窯に到着。


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看板からもうすてき

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こんな家に住みたい


出西窯の周りは高い建物が全く無くて、空が広い。雨はいつの間にか止んでいて、薄い青空の下に風情のいい建物がどっしりと建っていた。出西窯で出来たものを展示販売している『無自性館』という建物だ。入り口に近づくと、窓際に並んでいる器がもう素敵だった。ワクワクしながら中に入る。

中は吹き抜けの2階建て、1階と、少しだけ地面を下げたスキップフロアがある。程よいきっちり感でたくさんの器が並んでいた。入り口の近くから順番に、舐めるようにじっくりと見ていく。

事前に調べた情報では、出西窯では『出西ブルー』と呼ばれるなんとも言えないきれいな青色の器を出すようになり、それで人気に火がついたとのことだった。だが、元々出西窯で作られていたのは真っ黒な器だそうで、画像で見たときは私も夫もこの黒に惹かれた。実際に見た器たちは、黒、ブルー、そして白もあったのだがどれが一番ということではなく、どれも役割が違ってそれぞれのジャンルで最高だった。ノーマークだった白までめちゃくちゃに可愛いと言うのは嬉しい誤算だ。

一通り屋敷の中を巡って候補を絞り、改めて目星をつけた器たちをじっくり吟味。ものすごく楽しかった。どれも本当に良くて、爆買いしてしまった、後悔はしていない。いつ来られるか分からないし、次も同じものに出会える可能性はほとんど無い。今買わずしていつ買うのか。夫とはこういう価値観が非常に近いのでとても助かる。じっくり選んで決めた器たちは自宅に発送することにして、お店を出た。お店の壁にタクシー会社の電話番号が貼ってあったので電話して来てもらう。


お迎えした器たち


タクシーが来るまで10〜15分くらい、と言われたので待ち時間で作業場を見学させてもらうことにした。「ご自由にどうぞ」という看板があるものの、作業場の入り口はしっかり閉められていて本当に入って良いのか少し迷ったが、駄目なら出ればいいやと思い切って引き戸を引いた。入ったところに人はいなかったが少し大きめに「お邪魔しまーす。」と声を出して奥に進んだ。


作業場手前にある台所?きちんと手入れされてる感がたまらない


中は土間でかなり広く、シンと静かで、ひんやりした空気が満ちている。さらにもう一つ戸を引いて、職人さんたちが作陶している部屋に入った。こちらは少し暖かい。そして釉薬だろうか、何か今まで嗅いだことのない、独特の化学薬品っぽい匂いが漂っっていた。


所狭しと並んでいる生の器たち

土の削りかすすらきちんと片付けられていてとても美しかった

形がぴっしりしていて惚れ惚れする


ゆっくりと、邪魔しないように息を潜めて中を進んでいく。窓際に向かってろくろを回している人が何人もいた。ろくろを回すという作業は同じでも、形を整えている人、カンナで器を削っている人とやっていることは様々でいつまでも見ていられる。そっとそっと職人さんたちの後ろを抜けて、土の空気抜きをしてる人や釉薬を塗っている人のいる場所を通った。釉薬を塗っている人に声をかけて手元だけ写真を撮らせてもらった。


許可をいただいて手元だけ撮影させてもらった


作業場を奥へ進むと、今度はいよいよ登り窯だ。火を扱う場所だから何となく屋外を想像していたが、作業場からそのまま続く一室に登り窯はあった。ただ、ものすごく広い。登り窯の手前にはガス窯があり、ここでも職人さんがいらした。先程のろくろの頃は誰も着けていなかったマスクをして作業されている。色んな薬品を使うお仕事なんだろうなと感じた。


登り窯の説明

登り窯をサイドから撮影したところ

窯の内部。たくさん破片が落ちている

登り窯の正面。ここから火を入れるらしい。

登り窯がある建物の裏手には薪がたくさん積まれていた。


登り窯は薄暗くて広い部屋に大きさの割には静かな雰囲気で建っていて、なんだか神々しさすら感じるような佇まいだった。器たちを並べる炉の中まで見られるようになっている。床や棚に散らばった器の破片が生々しくて窯が「生きている」という感じがした。今まで2度ほど登り窯を見たことはあったけれど、一番良かった。

同じ敷地内に出西窯が営業しているカフェもあり、ここもなかなか美味しそうで素敵な感じだった。今度はゆっくり訪れてみたい。



羽根屋本店

登り窯でうっとりして作業場を出るとタクシーはだいぶ前に来てくれていたらしく、平謝りで乗り込んだ。次はお昼ごはんだ。また10分くらいで目的地に到着した。

出雲の食べ物情報を調べていくうちに出雲蕎麦というのがおいしいらしい、ということがわかり、夫がSNSで情報を募ってこの羽根屋本店を教えてもらった。出雲大社の周辺にも出雲蕎麦のお店はいくつもあり、旅程を組む上ではそちらの方が効率が良さそうだったのだけど夫がここがいい、と言い切ったので出雲に着きながら出雲大社にはすぐ向かわないマニアックなスケジュールになった。夫のこういう食べ物に関する勘には絶大の信頼を置いているためだ。

人気店らしいから開店と同時に入ろうと考えていたのだけれど、出西窯が良すぎて少し予定が遅れてしまった。相当並ぶのではないかと心配したが、すんなり入ることができた。東京の行列が異常なのかもしれない。

出雲蕎麦には割子そばというものがある。朱色の漆が塗られた丸い三段のお重にそれぞれ蕎麦が入ってて、一番上の段に蕎麦つゆをかけて食べて、そのおつゆを二段目にかけて、さらに食べ終わったら三段目にかけて・・・というように食べるそうだ。こうすることでおつゆに蕎麦や具材の風味が移り、よりおいしいおつゆになるらしい。ただ単にお蕎麦が入っているだけの割子そばもあるが、私はお重一つ一つ違う具材が入った三色割子そば、夫はお蕎麦だけの割子に天ぷらがつく天ぷら割子にした。


献上そば

奥に写ってるのは夫の頼んだ天ぷら。最初見たときは少ないかなと思った

一番下の段。真ん中は夢中で食べて撮り損ねた。

器に大きな屋号。格好いい。


初めて食べた出雲蕎麦はとってもおいしかった。お蕎麦はむっちりと噛みごたえがあって香りが良く、おつゆは少し甘め。この甘めのつゆがお蕎麦によく合う。夢中で食べてしまい、二段目を写真に撮り損ねた。お湯のみに入って供されたそば湯も良い香りで大満足だった。

羽根屋から駅までは歩いて10分もかからない。ぶらぶら街歩きを楽しみながら駅を目指した。とにかく、空が広い。家もでかい。良いところだなぁと思いながらあっという間に駅に着いた。出雲市駅から出雲大社までは電車でもバスでも同じくらいの時間で行けるが、電車だとだいぶ待つことが分かり、バスで向かうことにした。



稲佐の浜

バス停に並び、この後の予定を相談する。稲佐の浜というところで砂を頂いて出雲大社にある砂と交換して持ち帰ると家のお守りにできると聞いていたので、まずは稲佐の浜に行きたい。だが、出雲大社からは徒歩15分ちょっとかかるらしい。出雲大社をお参りする時間が足りなくなるかもしれない、出雲大社に着いたら稲佐の浜までの移動はタクシーを使うか・・・などなど話していたが、よくよくバスの停留所を調べたら、終点の出雲大社連絡所まで行けば稲佐の浜まで10分くらいで行けることが分かり、それなら歩けるとひと安心(ちなみに、出雲大社の最寄りは『正門前』という停留所になる)。バスでもギリギリ座ることができた。何もかもスムーズに行く。大変素晴らしい。

バスはおよそ1時間で終点の出雲大社連絡所まで着いた。すぐ近くにコインロッカーがあったので大きい荷物を預ける。すぐに稲佐の浜へ向けて歩き出した。途中、出雲阿国のお墓はここ、という案内や小さな神社があったが、まずは目的を達成しようと寄り道せずに真っ直ぐ歩く。

10分ほどで広い水平線と大きな岩が見えた。弁天島と呼ばれている岩だ。砂浜は白く、海は青く、波は穏やか。多少冷たい風が吹いていたけど、とても気持ちのいい場所だった。


道を歩いてて突如岩が現れるって面白い


弁天島のてっぺん近くに置かれた鳥居に向かってお参りし、ぐるりと周囲を歩く。波がかぶる場所もあって1周まわることはできなかった。弁天島の写真をパシャパシャ撮って、ふと気づくと夫の姿が無い。あたりを見回したら、かなり遠い波打ち際を歩いているのが見えた。手頃な棒を見つけて、それを持って落ちてるものを突っつきながらずんずん進んでいく。どこまで行くんだ。当初の目的を忘れるな。


人がたくさんいた

どうやって鳥居のところを手入れするのだろう

童心に返る夫


近寄って呼び戻し、砂をすくってジップロックに入れた。ミッションクリア。来た道を戻る。途中、神社の入り口に生えている木があまりにも変だと夫が言い出して近づいて見てみた。木と同じ色の何か太くて枝のようなものがつららのようにあちこちぶら下がっている。違う木が合体したのか、何かの巣か。近づいても正解が分からず、不思議がりながら出雲大社へと進んだ。ちょっと疲れてきて、出西窯で買った地元の生姜が原材料のジンジャーエールを飲んだ。生姜がものすごい勢いで押し寄せてきてめちゃくちゃ辛かった。


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★台湾でもよく歩きました↓

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