前回の続き
翌朝は少し早め、8時前にチェックアウトした。フロントで手続きしてる間に夫が駅前のコインロッカーに荷物を預けに行ってくれる。 峰へ行った時の反省を活かし、タクシーは前日に予約しておいた。チェックアウト後、既に待機していた車に乗り込み、夫を拾うために駅前のロータリーへ寄ってもらうようお願いする。運転手さんは補聴器をつけていて、ロータリーへ寄ってくださいと言うのが通じるまで数回同じ言葉を繰り返した。その後、夫とのやりとりはスムーズだったので、たぶん私くらいの声の高さが一番聞き取りにくいのだろう。申し訳なかった。
無事夫と合流して美保神社へ向かう。美保神社は出雲大社に祀られている大国主神の息子と奥さんが祀られている神社で、出雲とあわせてお参りすると『両参り』といってご利益が倍増すると言われている。お得だ。
早めにチェックアウトして朝の時間を狙ったのにも理由がある。ここに祀られているえびす神様は音楽の神様と言われていて楽器などの鳴り物を好まれる。そのため、毎朝、8時半頃から巫女舞が捧げられる。これに間に合いたかった。
これ以上無いくらいの晴天で、タクシーの窓からは朝日を浴びてキラキラ光る海が見える。気の良いタクシー運転手の取り留めのないおしゃべりに相槌を打ちながら景色を楽しみつつ無事8時半より少し前に到着できた。「ここで待っててあげる」という運転手さんのお言葉に甘えて待機してもらい、境内への階段を登った。
美保神社は出雲大社よりずっと規模はこじんまりしていたが、静かで綺麗でとても気持ちの良い神社だった。個人的な好みだけで言えば、私は出雲大社より美保神社の方が再訪したい。まずは正殿にお参り。それから御朱印帳を社務所に出していると、社務所の裏側が少しにぎやかになってきた。巫女さんが鏡を見ながら頭の飾りを着けているのが見える。そろそろ始まるっぽい。
御朱印帳を返していただき、どきどきしながら正殿の前に陣取る。しばらくすると神職の方が通路の中央を開けておくように案内しに来てくれた。いよいよだ。
静かに宮司がやってきた。後ろに禰宜が2人、巫女が2人続く。まずは全員で声を合わせて祝詞から始まった。だいぶ長く感じた。10分…もう少しあっただろうか。誰も何も見ないで全ての祝詞を読み上げた。すごい。よく覚えられるなと感心する。それから大きな太鼓が響き、笛と鼓に合わせて巫女舞が始まった。片手に鈴、もう片手には榊を持って鈴をシャラシャラ鳴らしながら踊る。ふわふわたっぷり袖をとった白い衣装がとても綺麗で、同じ動きの繰り返しなのにずっとずっと飽きずに見惚れてしまった。すごくすごく良いものを見た。
200%満足して、神社の階段を降りる。すぐ近くに青石畳通りという有名な旧参道があったのでぶらぶら歩いてみた。石畳も、両隣に並ぶ家や宿も良い古さがあって風情のかたまりだった。今度はここの宿に泊まるのも良さそうだなと思った。
青石畳通りを歩いたことで満足度は300%に跳ね上がり、じんわり感動を残しながらタクシーへ戻り、境港の「境港水産物直売センター」へ行ってもらうようにお願いした。美保神社は、島根旅の中で、一番好きなスポットになった。