※突然毛色の違う記事書いてますが、りっすんブログコンテストへの応募です。
思春期を迎えたあたりから20年以上、私は太っている人が嫌いだった。
道を歩いていて向こう側から太った人間が歩いて来ようものなら、目線だけで罵った。毎日のように顔を合わせる友人が2kg程度増量しただけでもすぐ気づいて注意した。久しぶりに会う友人が10kg近く増量していた時など、一緒に入った飲食店で食後のデザートを店員に勧められた際「この人は要らないです。」と勝手に断ったこともある。怒っていたから。「体の緩みは心の緩み」と言ってはばからなかった。
そんな私が、とある友人と、その友人と3人で飲みに行った。いわゆるオフ会だ。初対面の友人の友人は、完全に太っていた。どこからどう見ても、誰が見ても太っていた。少しだけ心に引っかかりを覚えたが、流石に初対面で友人の友人を罵るわけにはいかない。なごやかに食べ、飲んだ。その人はとても楽しそうだった。酔っぱらって、地元の震災の話を繰り返した。「デブにもいい人はいるんだな。」少しだけ自分の認識を改めた日だった。
それから1年と少し。その人と何度か会った。二人だけのときもあれば共通の友人が一緒のときも会った。最初に感じた「いいやつだな」という印象は何度会っても変わらなかった。そのうち、少しずつ二人だけで会う時間が増えた。
ここで私は迷った。いいやつなのはもう十分すぎるほど分かってる。だけど。…太ってる。そう、私がずっとずっと批判していた、嫌っていた体型。太っている。それでもいいのか?好きなのか?好きでいられるのか?自分の価値観は?アイデンティティは?
迷いながら、とりあえず友人としての付き合いを続けていたある日、会社の忘年会でネズミがメインキャラを務める遊園地のペアチケットが当たった。私も、その人もそこには全く興味が無い。それでも、まぁ、せっかくだからと思って誘った。意外にも、乗ってきた。
人生で2回め、30年ぶりの遊園地は、想定外にものすごく楽しかった。
お互い興味のない同士なので「どうする?」「どうしようか?」なんてやりとりしながらウロウロして、声かけたのは私だからなんとなく私の誘導で目についたアトラクションに乗って…と、そんなゆるい雰囲気でまぁまぁ楽しかったね、と言い合う一日で終わるんだろうなと私は想像していた。ところが、彼は『誘われたから来た』という空気を一切出さなかった。事前にアトラクションの混み具合が分かるらしいよ、と言ってスマホに入れてきたアプリを見せてくれたり、園内を回るコツみたいな情報を仕入れてきてくれたり、あれやってみたいこれやってみたいなど色々言ってくれたり、主体的に、一緒に楽しもうという気持ちにあふれていた。この人とならきっとどんなことでもちゃんと2人で楽しめる。そう思ったら、迷いはこれまでの価値観もろとも粉々に砕けて消えた。
あれから6年。私の世界は比喩じゃなく、ずっと輝いている。毎日ただただ楽しくて、笑って過ごしている。あの時この人がいい、この人だと決断して本当に良かった。私の人生の中で一番褒めてあげたい決断だった。
迷いはチャンスだ。迷いの根っこにある固定観念を見つけて、見つめて、本当に?と自分に問える、自分が変われる大チャンスだ。たくさん迷ってたくさん考えたらいい。その先にはきっと想像すらできない新しい世界が広がっている。
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