【前回までのあらすじ】
役所で金消契約に必要な手続きができなかった。
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早朝から気合を入れて役所に行ったものの必要書類が足りなかったせいで何の成果も得られず一度家に戻った私たち。銀行担当のフクミミさんのおかげで契約だけは今日のうちに終わらせられることになって一安心した。こんな演出は望んでいないのに。
フクミミさんにほんの気持ち程度だけど何か菓子折りを買おうと決め、約束の時間より少し早めに出発した。契約の場所はナチュラル社だったのでナチュラル社の最寄駅でお菓子を見繕う。私の選ぶお菓子を夫から悉く『はしゃいでいる』と評され、結局夫の提案でお煎餅の詰め合わせを買った。
ちょうど良い時間になったので待ち合わせ場所へ。迎えに来てくれたシゼンさんの車に乗り込む。いやぁ、とんだことで。とお互いで言い合いながら今日の出来事を詳しく話した。休日だと証明書が必要みたいなんですよね。と説明するとシゼンさんもそうでしたか、と納得していた。必要書類を調べきれなかったこと、そして休日に手続きしに行ったことは私たちの事情でもあるのでシゼンさんばかり責められない。それにしたってさっさと証明書を引き取りに行ってくれていれば無事済んでいたはずなのにという気持ちは残ってしまうけど。
ナチュラル社に着くとフクミミさんも既にいらしていた。今日はすみませんと平謝りしつつ椅子に座る。フクミミさんはいえいえ、ぜんぜんこちらは大丈夫ですので、と変わらず丁寧な態度で接してくれた。少し経ってから司法書士の先生もやってきた。司法書士の先生にはフクミミさんが事情を説明してくださる。先生はあぁ、書類は明日いただけるなら全然問題無いですよ、と全く気にしていない様子で答えて下さった。ありがたいことだ。
全員揃ったところでまずは司法書士の先生との確認だった。登記する建物の持ち分や住所をおさらいし、登記費用の請求書を渡される。これを○日までに払ってください。そうしましたら▲日に私どもで登記を完了させます、と説明してもらった。いただいた請求書の金額は事前に見積もりをもらっていたので問題ない。私と夫、2人でわかりましたと答え、それでは明日、ということで先生は帰っていった。
先生をお見送りしてから早速手続きに入り、フクミミさんから渡される書類へ次々と記入していった。押印欄もたくさんあったが、まとめて押しましょうとフクミミさんから指示を受けてとにかくまずは書きまくる。
私たちがひたすら書いている間、フクミミさんはシゼンさんとナチュラル社側から受けとる必要書類の確認をしていた。フクミミさんは、この書類だと詳細が分からないです、これは端が切れてるのでコピーし直してください、という調子でバッサバッサと書類の不備を指摘し、それに対してシゼンさんがえっ、でもこれが…とか、いやでもそれは…などと反論していた。反論されたフクミミさんはさらに駄目な理由を詳しく説明する。横から聞いていただけだが、フクミミさんの言うことに一理あるようにしか聞こえなかった。詳しい説明を聞いたシゼンさんはわかりました、と言って憮然とした顔で事務所の方に一度引っ込んでいった。
その間も私たちは書類を書き続け、ようやく終えて今度は押印へと進んだ。押印はフクミミさんに印鑑を預けて押してもらったので楽だった。私たちが押すよりよほど早いしきれいだ。押しながら世間話していると、憮然としたままのシゼンさんが戻ってきた。修正された書類を受け取ったフクミミさんはお礼を言いながら気を遣って明るくシゼンさんに色々話しかける。憮然を崩さず、気のない返事を続けるシゼンさん。いい加減にしなさいよ若造と思ったがもうどうでもいいので黙っていた。
フクミミさんにお願いした押印も全て終わり、とりあえず今日できるところまでの書類は整った。それでは明日、役所に行って書類をもらえたらナチュラル社にお持ちします、と約束して席を立つ。夫と目配せし、フクミミさんにほんの気持ちですが…と菓子折りを渡した。フクミミさんはいやいやいやそんな、何ももらうようなことしてないですよ、普通に仕事してるだけなんで、ちゃんとこれで手数料もいただいているんで、とたいそう遠慮されたが、私たちもいやでも本当にお世話になったんで、審査にしても、今回の書類のことにしても、と引き下がらず続けた。それでもフクミミさんはいやいやいや、そんなの別に大したことじゃないです、普通に仕事しただけです、とどこまでも遠慮するので、夫と私、2人がかりで必死にほんと気持ちなんで。そんな大したものじゃないんで。もしかしたらおいしくないかもしれないんで!と口々に言いつのり、なんとか受け取ってもらうことができた。いやぁ…ありがとうございます。とフクミミさん。物どうこうじゃなくて、お気持ちがうれしいです。やっててよかったな。泣きそうになっちゃうな。本当に感激している様子のフクミミさんを見て、私も泣きそうになってしまった。お礼を持ってきてよかったと心から思った。私たちのやりとりを見ていたシゼンさんにも、ようやくいつものシゼンさんらしい表情が戻っていた。
帰りはまたシゼンさんに送ってもらった。すみません、途中で空気悪くして…とシゼンさんも一応反省はしていた。フクミミさんには先に書類渡してるのに、なんでもっと前に言ってくれなかったんだろうと思っちゃって…と弁明が続く。いえいえ、と答えながらそういう事情なら気持ちは分からなくもないな。でもお客さんの前だぞと思ったことは黙っていた。シゼンさんと別れ、夫と疲れたねぇと労い合いながら帰りつつ翌日会社を休む手はずを整え、また朝イチから動かなくちゃと言って早めに眠った。
・・・
翌日。前日の疲れが残ってしまい、少し寝坊した私たちは開庁時間を数分過ぎた頃に役所に到着した。
窓口にまっすぐ向かって必要書類を提出する。書類は昨日書いたものをそのまま流用したのでスムーズだった。10分ほど待って、必要書類を全て手に入れた。第一関門突破だ。
一息つく間もなく役所を出て徒歩で移動する。司法書士先生の事務所は役所から徒歩圏内の距離だったのでまずはそちらを訪問し、手にした書類をお渡しした。第二関門突破。
ここまではうまくいっている。でもまだ。まだだ。今度はバスに乗ってナチュラル社の近くまで移動した。着いてすぐ近くのカフェに入る。ようやくここで朝ごはんにありつきひと息つけた。夫はBLTサンド、私はオリジナルサンドを選んだ。おいしい。
お腹が満たされ、落ち着いたところでテーブルの上をきれいにしてから今度は役所で受け取った書類を整理した。夫と分担してフクミミさんに指示された順番通りになるように揃える。黙々と進めていくうちに夫があぁっと小さく叫び声を上げた。間違えた!という夫に大丈夫だいじょうぶ、と声をかけた。書類の並びを変えればいいだけだ。しばらくするとあぁっ、また間違えたっ。と夫から悲壮な声が出た。落ち着いて。深呼吸しなさいとアドバイスする。その2回だけであとは上手くいった。
整った書類を手に再度バスに乗り、ナチュラル社へ向かう。初めてバスを使って自力でナチュラル社に向かったが、無事到着することができた。普段は入らない事務所の方の入り口を開けると、シゼンさんの姿は見えなかったが事情を聞いていたらしい社長がすぐ近づいてきてくれた。しばらく立ち話をしていたらシゼンさんも来てくれたので書類をお渡しする。これでミッションクリア。心の底からほっとした。
ありがとうございます、とシゼンさんが言ってから少し離れて立っていたユージさんの方を見つつ、先日、カーテンの打ち合わせで見ていただいた電気工事の件で確認がありまして…と続けた。そうですよね、ユージさん。とシゼンさんに促されたユージさんが近づいてきて、あの後探したんですが、やっぱりあの位置に付けられるようなご希望のタイプは見つからなかったんです。と言った。予想はしていたので、分かりましたと答えて結局他のところの照明と揃えることで話がまとまった。まぁこれは仕方ない。
そのまま近くで何か食べた後バスで帰ろうと考えていたのだが、社長さんがお送りしますよと強く勧めてくださりお言葉に甘えることにした。今までほとんどナチュラル社の社長さんとお話しする機会が無かったが、話してみてやっぱり社長になるくらいの人は違うなと感じた。話し方や話す内容に人を惹きつける何かがある。あとで聞いたら夫も同じ印象だったらしい。
帰ってきてやっと肩の荷が下りた。残るは最終確認、そして引き渡しだ。ゴールは目の前だ。
・・・
新しい家へのワクワクは日ごとに大きくなり、早く引っ越したいなとウキウキした気持ちで過ごしていた最終確認の前週のこと。シゼンさんから夫に電話があった。電話の内容は外構に関する確認と、ナチュラル社へ書類を持ち込んだ時に決めたはずの照明の話だった。
当初決めた照明が付けられなかった場所へ他の場所と同じ照明を付けようとしたところ、サイズが合わなくてまた付けられなかったらしい。他の場所と同じ種類で、サイズ違いの照明に変更してよろしいでしょうか、という相談だった。
もう限界だった。なんで照明ひとつに2回も3回も変更が入るのか。いったいユージさんは何を根拠に他の場所の照明と揃えてよいかと聞いて来たんだろう。サイズくらい計った上で提案するものじゃないのか。これが安くないお金をもらう仕事のやりかただろうか。
私は夫にもうこれ以上ユージさんに関わってほしくない、と言い、夫はどんなに駄目な人でも管理したのはユージさんだから最後までいてもらわないと、後々誰も経緯が分からないことが出てくる、と反対した。
これまで壁や屋根の色、床材、水回り、窓、ドア、カーテンetc…と大小様々なたくさんのことを決めてきた私たちだが、揉めることはほとんど無かった。お互いに『いいな』と思うものが近かったし、相手の強い要望があってその理由が分かればもう一方は納得して同意していた。それがここに来て、初めて意見がぶつかった。しかも建てている家の中身にあんまり関係ない。
せめて最終確認は他の人としたい、無理ならシゼンさんか誰かに同席してもらいたい、という私の言い分に最終的には夫が折れて、人手が足りなくて希望が通らないかもしれないけど言うだけ言ってみたら、と受け入れてくれた。
翌日。サイズ違いの照明で良いという返事をするため、そして最終確認の担当変更をお願いするため、シゼンさんへ電話をかけた。
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家づくり記録 目次① (1)~(10)1度目の検討 - star_of_bba’s diary
家を作ろうと決めたきっかけから家づくりを1度諦めるまで。
家づくり記録 目次② (11)~(23)建築会社決定 - star_of_bba’s diary
1度諦めた家づくりに再トライして建ててもらう会社を決めるまで。
家づくり記録 目次③ (24)~(32) 建築開始 - star_of_bba’s diary
家を建ててもらう会社が決まり、土地の購入から建築工事の開始まで。
家づくり記録 目次④ (33)~ 完成 - star_of_bba’s diary
工事の始まりから完成まで。