star_of_bba’s diary

甲状腺、卵巣と立て続けに手術したのち遊び歩いてます。

父を送る(2) 浸潤

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夏が始まったばかりの週末、父親から電話がきた。出ると息切れした掠れ声で息苦しいんだ、と言う。病院で診てもらったけれど数値に異常はないと言われたらしい。とりあえず木曜日にまた通院して主治医の先生に診てもらうとのこと。また木曜日に様子を聞くよ、と言って電話を切った。

父親が受診すると言っていた日、平日で出勤していた私は昼休みに父親へ電話した。どうだった、と聞くとやはり検査しても特に異常はなかったと言う。でもおかしいんだ、耳鼻科の医者は手術が必要だって言うんだけど、と父親。薬はもらえたの?と聞くと薬はあるよ、売るほどある、と返ってきた。そうじゃなくて息苦しさに対して何か処方された?と聞くと、それは無かったと言う。心配だが、主治医に異常は無いと言われて少し安心したのだろう、いつものように軽口を叩く父に私も少し安心した。数値に異常が無いと言うならまぁ、大丈夫なのだろう。また休みの日に都合つけてそっちへ行くよ、と伝えて電話を切った。

すぐにどうこうということも無さそうだったので、次の週末は前から決まっていた予定を変えず泊まりがけで遠出した。特急電車に揺られていると父親の妹である叔母から電話が入った。デッキに移動して電話に出ると「お父さんね、家に食べるものが無くて買いにも行けないんだって。今から叔母さんが届けに行ってくるから」と言われた。出かけるのもままならないのだと、その時に初めて父親の状態を知った。叔母の声は少し尖っていて、なんで何にもしないのこの娘は、という若干怒り気味のトーンだったが、私が素直にありがとうございます、と返すと少し面食らった様子でじゃぁまた、と電話を切った。


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