star_of_bba’s diary

甲状腺、卵巣と立て続けに手術したのち遊び歩いてます。

父を送る(9) 暗雲

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事前に聞いた話では入院翌日に手術して二週間程度で退院と聞いていたが、三週間近く経っても父親から何も連絡が無い。コロナの影響で面会は一切禁止されている。今どういう状態なのかが分からないので、こちらから電話するのも躊躇してしまっていた。そんな中、井田さんから連絡をもらい、父親の手術は無事終わって介護認定も再審査で要介護3がついたと教えられた。状況が分からずモヤモヤしていたが、知らないところで話が進んでいて少しほっとした。それでですね、介護保険の認定証がたぶん自治体からお父様のご自宅に書留で届いているはずなんですがお持ちでしょうか…と井田さんに聞かれた。床屋さんへ挨拶するついでに実家に寄った時のポストはほとんど空の状態で、書留の不在票も見当たらなかった。そう伝えると、そうですか…そろそろ届いてもいい頃なんですが…。と井田さんが気がかりな様子で呟いた。施設に入所するまでに必要なものらしい。実家に行ってから数日経っていたので、この間に届いているかもしれない。もう一度確認してみます、と答えて井田さんからもそうですね、お願いしますと頼まれた。
病院の阿部さんとやり取りしてくださっているようだったので、父親の様子を聞いてみた。気管切開後のリハビリがあまり効かず、水などの液体がうまく飲み込めず切開した部分から漏れてしまうらしい。そんな話を聞いて入院前から胸に広がっていた不安の影が少し濃くなった気がした。父親から連絡がなくて…私からかけても良いのかも分からなくて…と言った私に、井田さんは大丈夫だと思いますよ、と請け合ってくれた。それでも勇気が出ず、自分から電話することはできずにいた。

そうしてまた数日経ったころ、仕事の合間に覗いたスマホに知らない電話番号からの着信が残っていた。番号を検索すると父親の入院している病院からのようだ。折り返して着信が残っていたこと、父親が入院していることと、父親の名前を告げた。お調べしますねと言われてしばらく保留にされてから電話をくれた担当者に変わった。会計課の人だった。先月から入院が続いていますので、先月分の費用をお支払いいただきたいのですが…という内容だった。高齢者だから、という理由で父親には伝えず真っ先に私に連絡したらしい。父親はお金に関してはそれはもう嫌になる程きっちりしているし、間違っても私に金を立て替えさせるタイプじゃない。それに井田さんから聞いた様子では支払いができないような状態ではないはずだ。父親が誰も彼もに年寄り扱いされて相手にされていないような気持ちになってしまい、少しムッとしながら本人が払うはずなので本人に言ってください、とお願いして電話を切った。


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