star_of_bba’s diary

甲状腺、卵巣と立て続けに手術したのち遊び歩いてます。

父を送る(28) 葬儀までの在宅

前回の続き www.ribbons-and-laces-and-sweet-pretty-faces.site

最初から読む www.ribbons-and-laces-and-sweet-pretty-faces.site



翌朝。夫が近所のコンビニに買い出しに行ってくれて朝食を食べた。あまり食べることに興味は湧かなかったが、倒れるわけにはいかないぞという義務感で食料を口にした。買ってきてくれた夫に昨日から何度目か分からないお礼を言った。夫は俺べつに何もしてねえよ。俺のミッションはあなたにごはんを食べさせることだけだから。と言った。夫は一貫しておれは別に何もしていない、と言い続けた。感謝してもしきれない。

朝食をとった後、夫が一度家に戻って着替えとか必要なものを持ってくるよ、と言ってくれた。だいぶ大荷物になるが、父親を置いて二人で千葉に戻るわけにもいかない。申し訳ないと思いつつ、お願いすることにした。

夫が出かけてから私は私でやることを進めた。OB会の会長に電話した。会長はお通夜と葬儀の日時を確認して分かりました、OB会で周知しておきます。と請け合ってくださった。これで会社関係はひと安心だ。他には、私も何度か家にお邪魔して親戚のようにお付き合いしてくれていた、会社関連の人が二人いたので父親のスマホを使いながら連絡を取った。急な知らせにもかかわらず、私が生まれるまではまるで娘のように仲良くしていた方が、知らせを聞いてお線香をあげに駆けつけてくれた。すごく立派なお花まで持ってきてくれて、本当にありがたかった。

夫がキャンプに行くとき使う大荷物を入れるキャリーを引いて戻ってきてくれた。着替えや私の化粧品まで持ってきてくれて、さらに、あると便利だからと電気ポットも安いやつを探して買ってきてくれた。朝の買い出しで残っていたものをお昼ご飯にして二人で食べた。一人で選んだ遺影をこれ、どうかなと夫に見せた。釣り場で釣果をぶら下げながらニッカと笑っている写真だ。光の当たり具合も表情もいいよ。完璧。と夫が太鼓判を押してくれた。

午後になって葬儀屋さんが再度来てくれた。ドライアイスを交換し、葬儀の詳細を打合せする。父親の言いそうなことや選びそうなものは容易に想像がついて、夫とこれがいいよね、お父さんだったらこっちだね、などと言いながらサクサクと決めた。
ヘンな話かもしれないが、この時、あぁ、父親はちゃんといるんだなと思った。どうしたいか、なにしたいか、こんなにも簡単に思い浮かべることができる。この先も父親の言いそうなことや気に入らないこと、喜ぶことなんていくらでも想像できるだろう。そうか。こうやって人は生き続けるのか。父親が亡くなっても私は一人じゃなかった。とにかく世間体が大好きだった父親のために、どれもオーソドックスなタイプにした。
宿題として出されていた遺影の写真も渡す。下に合成でつける服も選ぶ必要があった。しっかりした笑顔なのですこしラフな感じがいいよね、と夫と二人でポロシャツっぽい服に決めた。

ご近所を回って挨拶もした。すぐ裏手のおばあさんはショックで泣き出してしまった。こんな風に悲しんでくれる人がいることがとてもありがたかった。

あとは叔母と親戚の誰それが葬儀に来る、誰それは連絡つかないなどとやりとりをしつつ、ずっと家で過ごした。時間が進むのが早かった。

翌日、夫と喪服をどうしようか、という話になった。今ここで慌てて買うことはないけど、レンタルするにしてもどこかに出向かなくてはいけない。どちらか一方が代表して行ける話でもない。どうする?二人で探しに行っちゃう?いやでも、ねぇ。そうだよな。お義父さんいるもんな。二人で出かけたら死体遺棄になっちゃうよな。と夫が言うので笑ってしまった。葬儀屋さんならレンタルしてるんじゃないか?と思い付き、電話で来てみたらありますよ、と言われてあっさり解決した。お通夜のお迎えが来た際、我々も車に乗せてくれるそうで、そのまま父親だけ先に会場に送ってもらい、我々はレンタルショップで下ろしてもらって後からおいかける手はずを整えてくれた。さすがに老舗だけある。こちらにお願いしてよかったと思えた。

二日目のランチは家から徒歩二十分くらいのところにあるちいさなお店でアジア飯をテイクアウトしてもらってきた。これがなかなかにおいしくて良かった。

二日目の夜ごはんは寿司の出前を取った。これまで全然知らないお店だったが割と近くにあったことをマップで知って頼んでみた。とてもおいしくて満足できた。

ピリ辛のごはんも、寿司も、父親の好みだ。土日はさんで家でゆっくりするスケジュールと言い、ごはんのチョイスと言い、父親の希望通りに事が運んでいるようでおかしかった。

二日目、三日目も暖房をガンガンにつけながら眠った。それでも寒くて、私は眠りも浅くてあまり疲れが取れる感じではなく、夫に申し訳なかった。


続きはこちら www.ribbons-and-laces-and-sweet-pretty-faces.site





こちらで書いた父を送る話をまとめて書き下ろしの後日談を付けた本を通販しています。よかったら以下の記事から詳細をご覧ください。 www.ribbons-and-laces-and-sweet-pretty-faces.site