star_of_bba’s diary

甲状腺、卵巣と立て続けに手術したのち遊び歩いてます。

父を送る(4) 最初の呼び出し

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その後二週間ほどは父親からの連絡も特に無く、いつも通りに過ごした。実際に会ったときの父親の痩せ細った様子から最初のうちこそどうなったかなと気にしていたが、だんだん連絡が無いことを都合よく捉えて実は大丈夫になったんじゃないかと楽観視し始めた私は、例年通り夫の会社の夏休みにあわせて数日間の有休を取り、楽しく夏休みを過ごしていた。
お盆の終わりに夏休み最終日のイベントと称して神楽坂の美味しい懐石料理を食べに行き、美味しいお料理の余韻に浸りながらの帰り道、電車を待っているところに父親から電話が来た。不安を感じながらすぐに出る。父親の声は相変わらず掠れていた。電話の内容は病院への付き添いの依頼だった。息苦しさが改善しないので手術になること、手術をしたらその後のケアが必要なので施設へ入らなくてはいけないことを説明されたうえで、施設の入居について介護保険が使えるかどうかよく分からないから一緒に話を聞いてくれないか、と言う。指定された日は二日後で、ちょうど夏休み明けの出社初日だった。たっぷり夏休みを取った上でさらに休みを延長することにも、こちらの都合などお構いなしで直前に連絡してくる父親にも抵抗があった。ちょっとその日は難しいな…と言う私に、なんとかならないかな、と珍しく父親が食い下がった。こういう時頼りにしている叔母と連絡が取れないのだと言う。仕方ない。これは自分が後悔しないために受け入れなくてはいけないことだ、と判断した私は考えを切り替えて分かった、行くよ、と答えた。そう、悪いねと言う父親から病院を訪問する時間を聞いて電話を切る。夫に電話の内容を説明した。夏休み延長じゃん、と話を聞いた夫に言われる。うん、そう思うことにしよう。

父親と病院へ行く約束の日になった。自宅から父親の通う病院までは電車でおよそ二時間半の距離だ。約束の時間より早めに着くように普段の通勤よりも早起きして出かけた。病院には一時間以上前に着いたが、既に父親は病院のロビーに座っていた。やっぱり、という気持ちと早いな、という気持ちが同時にこみ上げる。父親の隣には叔母も居た。叔母は連絡が取れなくて来ないのではなかったのか。これなら私がわざわざ休みをとってくる必要はなかったのでは?と少しモヤモヤした気持ちで二人に近づき挨拶して近くの椅子に座った。父親から介護保険に関して自治体が発行しているパンフレットや病院からもらったらしい資料を渡される。一通り目を通したがよく分からない。ここに来るまでにネットで検索してみて、施設に入居しても介護保険は使えるらしい、と言うことまで分かったものの、具体的には何が保険で賄えるのかまで調べ切ることができなかった。パンフレットを読んでもネットで書かれていたことと同じようなことが書かれているだけだった。結局聞いてみないと分からないな、と判断した私は早々にパンフレットをパタンと閉じた。父親がどう?分かった?と聞いてきたのでわかんない、と返す。そうか、と頷いた父親は私が来る前にやり取りしたらしい病院の事務職員の態度の悪さを口汚く罵り続けた。


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